他所では生真面目な整頓家であるが、個の空間となると一転物を散乱とさせる人間は多い。筆者もその内の一人であって、筆者の場合敢えて書類や資料を散乱とさせ置くのが兎に角好きなのである。
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初学者の夢
しかし自分の目標設定が余りにも曖昧で──謂わば諦めが悪い故に、『全てを理解したい』という無智な完璧主義的性質が此処でも悪さをし、初学者の分際で身の程知らずの絶望を繰り返している。
失った人と円柱
昼近い朝に起きたら、僕は怠惰な足取りで階段を下り居間に入る。待機している助手にやぁお早う、と声を掛けると…
飛び去り飛び乗る15人
発車合図に急かされ乗り込んだ車両は最後尾で、同時に最後方の扉でもあった。
雷を肴に酒を飲む
既に一月も前の事になる。弐阡弐拾年皐月第六の日は、凄まじい嵐の夜であった。其の時私は、全ての人工的な音を断って部屋を暗闇にし、荒れ狂う雨風を厭わず窓を開け放って、寝台の上に膝を抱えて座っていたのである。
僕を脅かしても面白くないだろう
しかし怖がりであるが故に問題は起こる。恐怖が想像力を悪用して、娯楽の時限を超え平穏を望む時限にも闇と蔭とを媒介に侵蝕して来るのである。
蛸焼きを焼きながら原始の地球を思う
太陽系は45億6700万年前に誕生した。原始惑星は微惑星同士の衝突反動によって岩漿の海に包まれており、冷えた所々は岩石となり固まった。そしてまた衝突が起これば、一面岩漿に包まれる。此れを繰り返していた。原始地球も又た、其の様な微惑星の内の一つであった。
草花に名の有る事が嬉しい
最近はすっかり草木の名前を識る愉しさに没頭してしまって、殆ど中毒の様になっている。夢ですら珍しい植物を見付けてはその目、属、種名を調べて、己が図鑑に加えて喜ぶ事を繰り返している。然し本当に、彼等の名前を識る事は面白いのだ。
靴下は厚めが好きだ
未曾有の軟禁元年もそろそろ初夏に差し掛かるが、肉厚の靴下を好きで履いている。暖かさよりも、分厚いという事が重要だ。靴の中が靴下の肉でギュッと詰まって、自分の足の肉と一体に成っているかの様であると、何だか走り易い様な気がする。此処十何年、碌々疾走した事など無いにも関わらず。
パン屋の無い街に住んでいる
我が家の近隣に在ったパン屋が潰れた。私はパン屋が潰れる様な街に住んでいたのかと絶望した。