神秘的真実について

 此の世には、真実なれども納得の行かない事が余りにも多い。彼の大国の大統領選で、政策以前に人として未熟な人物がやはり四年前同様票を集めている事や、他人の人権を踏みにじる事を己の正当な権利、ひいては社会の正常な運用の一環なのだと疑い無く主張する人間等も、其の一種である。

 然し私には其の内でも、特別に、圧倒的に納得の行かない、一つの真実が在る。此の世を覆う不可思議の力を思い知る。其の真実は身近に在りながら、私にとって古代文明の遺せし金字塔や地上絵よりも謎めいて、自然の神秘、人間の認識のまやかしたること、秘密の因果と予定されし不条理を軽やかに暴き、そして披瀝する物である。
 こう云う類の知識を知れば知る程、物心付いてより億劫にしか思えぬ我が生なれど、面白く感じて来る。終ぞ気付かれぬとしても、私自身にもまた人間の認知を超越して、何かしらの神秘的由来、忘形見の威徳が宿っている事は十二分に有り得るのであり、此れを否定する事は、理性的であればある程難しい。究極に「納得の行かない真実」であるが故に、「自然の可能性」を知る事となったのである。


『DNA的にはシベリアンハスキーより柴犬の方が狼に近い』

──此の真実の謎めきたることと云ったら、そんな筈は無い、としか言い様が無い。
絶対に、どう考えても、誰が見ても、ハスキーの方が近い。だと云うのにDNA情報は、螺旋状に連綿と続く生命の記憶は、人間共の粗末な認識能力を嗤うのである。馬鹿げた仮象を認識しているに過ぎない、と。あの円らな、全てを信じている黒曜の瞳。頼り無さや怯えでなく、唯ひたすら心の素直さ故に忙しなく、外界に直向きに跳ね動く四肢。機嫌良く丸まり上がった尻尾。其の何れも、我々の想像する狼に通ずるとは思えない。蒼く孤独な瞳、軽侮から来る愛玩心など跳ね除ける様な野性味、大地を踏み締める四肢の、覚悟の透けた重みを具えたハスキー犬は、やはり多少は狼に近いらしいが、チャイニーズ・シャー・ペイと同レベルだそうだ。
 我々人類の認識は何処までも恣意的で、表面的に過ぎる。其れは或る時、魔術的な虚構を紡ぐのに役立つが、或る時には真実を覆い隠す。自然は其れを指摘する為に、度々ベールを脱いで、不可思議な真実を我々に与えるのであろうか。

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(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/シャー・ペイ より)

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